入浴を、嫌がる利用者さん、結構いらっしゃいます。
理由はそれぞれ。
若いやつの世話にならず一人で入りたいとか。
そもそも、お風呂が面倒とか。
他人に裸を見られるのが嫌!とか。
今日は、訳あってお風呂を拒否していた利用者Mさんのお話です。
お風呂介助の時には介助者は大体、中介助者、外介助者と二手に別れます。
ちなみに、外介助者は、脱衣場で衣服の着脱やドライヤーをかけたり、次にお風呂に入る利用者さんを、呼びに行ったりと、いわゆる浴室外でのサポートをする人、
中介助者は、浴室で、身体を洗ったり湯船に入る際に見守ったり介助したりする、浴室の中でのサポートをする人のことをそう呼んでいます。
とある日の入浴時のこと。
「ふく子さん!次、Mさん呼んできてー。Mさんは、お風呂嫌いな人で普通に誘っても来てくれないから。うまいこと連れてきてー」
と、中介助者からの指示があり、私はM子さんの部屋に向かいました。
当時私は、まだ入って間もない新人でしたので、きちんと来てくださるか不安を抱えつつのチャレンジです。
こんこんっと、扉をノックすると
「はいよォー」と言う元気な声。
「失礼しまーす!Mさん、ちょっと良いことがあるので私と一緒に来てください♪」
私の声に振り向いたMさんは、お洒落が大好きな活発な方。
にかっ、と笑い、切れ長の綺麗な目元を細めて入り口まで来てくださいました。
「良いこと?なーんだい。お菓子でもくれんの?」
「行ってからのお楽しみですー♪」
ニコニコしながら私の後ろを歩いてきたMさんでしたが、お風呂場手前でピタリと足が止まりました。
「ここ。お風呂だべ。」
眉間に太いシワがよってしまって、綺麗な顔が台無し。
「そうです、お風呂でサッパリしましょ♪」
私の言葉にもっと眉間のシワを深くしたMさんは
「私はここの風呂が大嫌いなんだよ」
と、ひくーい声で仰いました。
そんな会話をしていると、中介助者が顔を出し
「待ってましたよ、お風呂に入りましょ!」
と、Mさんを誘いました。
Mさんは、渋々、脱衣場へ。
脱衣場でMさんの介助をしながら私は
(お風呂って気持ち良いし、何が嫌なんだろ)
と、考えていましたが。
答えは数分後にわかるのでした。
身体を荒い、サッパリしたMさん。湯船に入って下さいとの声かけに激しく拒否。
「やだよ!こんなきったねえ風呂入りたくない!」
確かに、施設では都度お湯を入れ替えないところもあり、勤務してた施設もそれは同じでした。
時間と人員の都合が大きな理由だと思います。(一人一人お湯を入れ替える時間がない)まあ今はもしかしたらコロナの関係で入れ替えているかもしれませんが。
でも。それにしたって普通は都度ネットで髪の毛とかすくってるはずだけどなあ。
どれどれ?と思いお風呂の中を覗いてみると
「Oh…」
確かにきったねえ風呂がそこにはありました。
色んなものが浮き沈みしてらっしゃる。
男女トータル6名は入っていて。しかも、お湯を足さずに、ずっと同じお湯みたいです。
あ、あたしも、こんなきったねえ風呂には入りたくないです。と、心の中でMさんの言葉に大きく頷いていた訳なんですが。
弁解すると、私みたいな当時新人が色眼鏡のない状態で見ると気付くことってあるんです。でも、現場で長くやってると、感覚が麻痺してわからなくなる事があるんです。多分どんな仕事でもあるとは思いますが。
そう。結論をお伝えすると、綺麗好きなMさんは。
お風呂自体は大好きなのです!
ただ、何人入ったかわからないような汚い風呂が嫌いで拒否していただけだったのでした。
後日、しっかりお湯を巡回させ、綺麗なお風呂を用意したところ、とっても機嫌良く長風呂しましたとさ。というお話でした。
今回はたまたま、シンプルな理由で入浴拒否していらしたこと、お湯の入れ換えや継ぎ足し等が可能な施設だったためあっさり解決しましたが、お風呂に関しては色々と難しいケースが沢山あります。
転倒リスクが高く、見守りが必須な利用者さんが一人で入りたがったり。(もちろん気持ちはわかりますが、利用者さんの状態によっては異食などの危険がある。)一番風呂じゃないと、嫌だったり。逆に、一時間以上長風呂したい、とか、お湯の温度を上げて欲しいなど。求めていることが理解できても、施設での集団生活であるがゆえに叶えて差し上げられないことも沢山あります。
ただ、お風呂って気持ちがいいものですし 利用者さんにとって少ない娯楽のひとつ。楽しく過ごしていただけるようできる範囲で配慮しつつ、職員も日々過ごしているのです。

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