夜勤明け疲れがとれないのが最近の悩みです。
私もう若くない。
若い頃はオールナイトしても平気でしたが、ここ数年引きずるんですよね。
悲しいー。
一睡もせずに友達とカラオケで騒いだり居酒屋で語ったのは遥か遠い昔の思い出です。
さて、現在福祉の現場では自立支援をベースに利用者さんのケアをしています。
生活リハとも言われていますが、ご自身の身の回りのことや、家事を職員見守りの元行っていただくのは、脳に刺激を与えるためにも大切なことです。
ホテル暮らしのように、何でもかんでも職員がやってしまうと、いつの間にか自分でできなくなってしまうんです。
しかも、高齢の方はカンを取り戻すのに何倍もの時間がかかってしまう。
現在の身体機能の向上…までは望みませんが(どうしたって年齢とともに身体機能の衰えは出てきてしまうので)、維持と低下を緩やかにするために多くの施設で行われています。
そんな、自立支援を行っていく中で、感じるのが、ケアする側のメンタルの維持の難しさです。
表題にもありますように、自立支援を行っていく一方、衰えを受け入れ適切な介護用品などを取りいれたり、ケアの段階を落とす、あきらめることを、ケア側が受け入なければいけない時期が来ます。
利用者さんとの付き合いが長く、身体機能の衰えが顕著ではない時期からの付き合いであればあるほど、あきらめきれない様子が見て取れてしまい、切ないなあ…と感じてしまいます。「きっと回復する」と期待してしまうんですね。
今でも忘れられない思い出があります。
私がとある高齢者施設で働いていた時のことです。
認知症を患っていた、とある男性利用者さん、Aさんがいました。
Aさんは、心優しく男気もあり、弱きを助けフォローする、穏やかな品のある紳士的な方でした。
いつも「きちんと髪をセットしないと、だらしないからな」と仰り、髪を水で濡らし、きちんと櫛を通し、シャツとスラックスを着用され、身だしなみに気を遣うナイスミドルでした。
新人職員だったころ、色々と慣れず困ったことがあった時には優しい言葉を下さり、ミスしたときにも「大丈夫」と励ましてくださいました。何度も助けていただきました。
しかし、日々認知症は進行していき、徐々に確実に認知機能が低下してしまいます。
冬の寒いある日、Aさんはインフルエンザで高熱を出し数日寝込んでしまいました。
高齢者の方は、高熱で寝込んだ後、ADLの低下が激しい印象があります。
Aさんも例外ではなく、認知症が急激に進行してしまいました。
Aさんは、ある日、私に「ごめんな、俺なんか変なんだ。日に日におかしくなっちまってよ。自分が嫌になるよ」と、小さな声で語りかけてこられました。
日に日に衰えていく自覚を持ちながら日々過ごしていく。
自分に置き換えてみると、なんて恐ろしさと不安を感じながらの生活なんでしょうか…。
Aさんの毎日の日課に以前から行っている「書写」がありました。
以前であれば、きれいな文字でスラスラと書きこなすことができた、Aさんにとってはなんということはない日課でした。
しかし、認知症が進行してしまったAさんは、文字を思い出せず、書きものが進みません。
文字の間違いを指摘されても、元の文字がわかりません。しかし、プライドもあります。自身の機能低下を悟られたくなかったのでしょう。「わからない」とは言えないご様子でした。
次第に、ご自身の不安や怒りから、「やってらんねえよ!」と、筆を置いてしまいます。
私は、Aさんは認知症が進んでしまったんだ。もう、文字かきは厳しいのだろう。そう思いました。
しかし、当時のリーダーは「あきらめないで、やりなさい」とそばに寄り添って根気強く文字を書いていただこうとしていました。
私はその光景をみて、ああ、酷いな。なんて残酷なんだろう、と感じました。リーダーに対して反発心も抱きました。
後にリーダーはこう語ります。
「Aさんは、入った当初は本当に何でもできて頼りがいのある人だったのよ。周りのみんなを助けてくれてね。私だってだいぶ助けてもらったの。それが、こんなにいきなりできなくなっちゃったもんだから。今のAさんを、私も受け入れることができてなかったのね。」と。
まだこの人はやれる、ここで終わる人ではない、そう思ったからこそ、あきらめることができなかったのでしょう。熱意をもって、昔のように文字を書いていただこうと思ったのでしょう。
後に、ご自身のことをそう振り返るリーダー。彼女は、負けん気が強い方であると同時に、根底にいつも利用者さんに対しての愛情がありました。新人の私なんかより、Aさんの認知症の進行を何倍も悲しんでいたのでしょう。
長年共に生きた方こそ、身体機能の衰えや認知症の進行は、受け入れがたい。
しかし現実は残酷です。
利用者さんの終末を見守る。
利用者さんに寄り添いながら、客観的に利用者さんの状態を判断する。
利用者さんが、安心、安全に、心穏やかに過ごせるようサポートをする。
言葉にすると非常にシンプルですが、奥深く、難しいものであると感じます。

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